公益財団法人 オイスカ OISCA

世界の国の森のおはなし~世界「子供の森」探検ツアー~は、「国際理解」や「環境」について考えるきっかけを楽しく簡単につくれる「かみしばい」です

公益財団法人オイスカ

この教材は、平成25年度子どもゆめ基金(独立行政法人国立青少年教育振興機構)助成金の交付を受けて作成したものです。

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「インドネシアの森のおはなし」

作:公益財団法人オイスカ

シボラン

「スラマ シアン!」

セリフ

カブトムシのシボランが、大きな声で言いました。
「スラマ シアン」とは、インドネシア語で「こんにちは」という意味です。
さあ、みんなもシボランに挨拶してみましょう。

セリフ

ここはインドネシア、シボランの故郷。
美しい棚田が広がっています。
棚田とは、斜めになった土地につくられた田んぼのことです。まるで階段みたいに見えますね。

今日は、他の国から来た動物たちと田植えをするようです。

ハリィ

「田植えって、大変だね!」

セリフ

ドイツから来たハリネズミのハリィが、汗をかきながら言いました。

シボラン

「うん。ひとつひとつ手で植えるんだよ」

セリフ

シボランが他の動物たちに苗の植え方を教えています。

モール

「ランランラン♪ 大変だけど、みんなでやれば楽しいね~!」

セリフ

インドから来たクジャクのモールが、歌いながら言いました。

ゾウママ

「……それにしても、タックは何をしてるのかしら? 遅いわねぇ」

セリフ

ケニアから来たゾウのゾウママが、心配そうに言いました。どうやら、タヌキのタックがまだ来てないようです。

タック

「みんなぁ〜、お待たせ!」

セリフ

田植え機を押しながら、タヌキのタックがやって来ました。

タック

「これを使えば、田植えなんて、アッという間だよ~」

セリフ

タックが日本から持ってきた田植え機に、動物たちは興味津々です。

シボラン

「わぁ~。とっても楽チンだねっ」

セリフ

シボランがタックの田植え機を借りて、苗を植えています。

タック

「エッヘン! これはね、今日のために僕がカイゾウした、世界にひとつだけの田植え機なんだ」

セリフ

タックはとっても得意げですが……、

ボン、ボン、ボン、ボン。
田植え機から、何だかおかしな音が聞こえます。 あれれ〜? どうしたのかな??

ボボボボボボボ……

セリフ

ボンッッッ!!

大きな音を立てて、田植え機が田んぼの外に飛び出してしまいました!

シボラン

「わわわわっ!?」

セリフ

シボランも一緒に引っ張られて飛び出します。

みんな

「大変だっ!!」

「早くシボランを助けなきゃ!」

セリフ

みんな大慌て。
田植え機はぐんぐん進んでいきます。

シボラン

「わぁぁ~! 助けてぇ~!」

セリフ

田植え機は、シボランを引っ張ったまま、すごいスピードで森の中へ入っていきます。

みんな

「お~い、待てぇぇ~!!」

セリフ

みんなで一生懸命シボランを追いかけますが、なかなか追いつきません。

シボラン

「いったいどこまで行くんだよぉぉぉ!!」

セリフ

シボランが泣きそうな声で叫びます。

セリフ

いつもは静かな森が、今日は大騒ぎ!
なんだなんだ?!と、森の生き物たちもびっくりした様子です。

そして、森を抜けると……、

セリフ

どっかぁ〜ん!!

みんな

「イタタタタ……」

セリフ

動物たちは勢いよく何かにぶつかりました。
くるくるくると、シボランが目を回しています。

タック

「シボラン、大丈夫?」

セリフ

タックが心配そうに言いました。

シボラン

「……ティダ アパアパ!」

セリフ

と、シボランが起き上がりながら言いました。
「ティダ アパアパ」とは、インドネシア語で「大丈夫」とか「なんでもないよ」という意味です。
ティダ アパアパ! シボランは何とか無事だったようです。

でも、ほっとしたのもつかの間。

動物たちの目に飛び込んできたのは、

セリフ

見上げるほど積み重なった、たくさんの汚いゴミ!
田植え機と動物たちは、これにぶつかって止まったのでした。

ハリィ

「うわ〜、ゴミの山だぁ!」

セリフ

ハリネズミのハリィがびっくりして叫びました。
お菓子の袋やペットボトルに空き缶やビン……、おまけに川の中までたくさんのゴミが捨てられています。

モール

「みんなっ、大変だ! ゴミだけじゃないぞ。森がなくなってる!」

セリフ

クジャクのモールが青ざめた顔で言いました。
なんと、まわりの木が全部切り倒されているのです。

いったいどうしてしまったのでしょうか?

シボラン

「インドネシアはね、今、どんどん森が切り開かれて、工場や家に変わっているんだ。キレイな環境が、いっぱい、いっぱい、こわされているんだよ。このままじゃ大変なことになってしまうよ!」

セリフ

悲しげな顔をしたシボランが、みんなに説明しました。どうやらインドネシアの森や川がピンチのようです。
シボランはさらに話を続けます。

シボラン

「それにね、このままあちこちにゴミが捨てられると、僕たちの遊ぶ場所もなくなっちゃうんだ。この前、友だちが川で遊んでいたら、ガラス瓶のゴミで足をケガしちゃったし……」

ゾウママ

「子どもたちの遊ぶ場所までなくなるなんて、ひどいわ」

セリフ

ゾウママが思わずそう言いました。

動物たちは、なんとかしなきゃ、という気持ちでいっぱいです。

タック

「そうだ! みんなでゴミを片づけようよ!」

セリフ

タックはそう言うと、こわれた田植え機をショッピングカートのようなものに改造しました。

シボラン

「これならたくさんゴミを運べそうだねっ」

セリフ

シボランがうれしそうに言いました。
そして、

みんな

「えっほ、えっほ、えっほ!」
「よいしょ、よいしょ、よいしょ!」

セリフ

みんなでがんばってゴミを片づけることにしました。今度は、タックの発明品がちゃんと役に立っているようですね。

ハリィ

「でも、ゴミは片づければ何とかなるけど、なくなった森はどうすればいいのかなぁ?」

セリフ

ハリィが、 ふと、そんなことをつぶやきました。

そのときでした。

ウータ

「おぉ~い、みんな~!」
「いっしょに木を植えようよ!」

セリフ

オランウータンのウータが、両手に苗木を抱えてやってきました。ウータは、シボランと同じくインドネシアの森で暮らす動物です。
隣にいる鳥は、ジャワクマタカ。ウータとたくさんの苗木を運んできました。

動物たちは、ウータとジャワクマタカの提案に大賛成です。

みんな

「みんなで木を植えよう!」

セリフ

マホガニー、シナモン、パパイヤ、アルバシア、そしてチーク。
動物たちは、一本一本、心を込めて植えていきます。

シボラン

「豊かな森がぁ〜、もどりますよ〜にぃぃ!」

セリフ

シボランが大きな声で言いました。

みんな

「豊かな森がぁ〜、もどりますよ〜にぃぃ!」

セリフ

他の動物たちもシボランのマネをして言いました。
そして顔を見合わせ、いっしょに笑いました。

みんなの植えた木は、きっと元気に育って、楽しい森になるはずです。

ウータ

「インドネシアは農業が盛んな国なんだ。森が元気になって、ゴミも捨てられなければ、川や海も元気になるんだ。そうすれば、森でも、田んぼでも、畑でも、きっとおいしい食べ物が育つはずだよぉ」

セリフ

ウータがみんなに言いました。

シボラン

「今日植えたお米も、おいしく育つといいなあ」

セリフ

シボランが言いました。

みんな

「インドネシアのお米はどんな味かなあ?」
「楽しみだ〜!」

セリフ

と、みんなでワイワイガヤガヤ。

さあ、次は動物たちにどんな旅が待っているのでしょう。

おしまい。

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