公益財団法人 オイスカ OISCA

世界の国の森のおはなし~世界「子供の森」探検ツアー~は、「国際理解」や「環境」について考えるきっかけを楽しく簡単につくれる「かみしばい」です

公益財団法人オイスカ

この教材は、平成25年度子どもゆめ基金(独立行政法人国立青少年教育振興機構)助成金の交付を受けて作成したものです。

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「フィジーの森のおはなし」

作:公益財団法人オイスカ

ダクワカ

「わあーっ お日さまがのぼってきた!
きれいだなあ。OLE(オィレー)」

ダクワカ

「ぼくサンゴのダクワカ!
今日はぼくの友だちが、はるばる、日本、フィリピン、
インドネシアからフィジーにやってくるんだ。
おだやかでとってもいい日になりますように!」

セリフ

その日の午後です。ダクワカに案内されて、
日本タヌキのタック、フィリピンのウミガメのリノ、
インドネシアのオラウータンのウータが浜辺にやってきました。

タック

「うわあっ なんて青い海!」

セリフ

タヌキのタックが歓声をあげました」。

リノ

「砂浜が真っ白だっ!」

セリフ

ウミガメのリノは砂浜の白さに驚きました!

ウータ

「ねえ、ダクワカ、
あそこにいるみんなはいったい何をしているの?」

セリフ

オラウータンのウータがたずねました。

ダクワカ

「これはね、フィジーに昔から伝わる『カバの儀式』。
村人はきみたちを歓迎しているんだよ」

セリフ

「Bula(ブラー)!」
村人たちがフィジー語で「こんにちは」と
あいさつをしてくれました。さあみんなもいっしょに、
あいさつしましょう。せ〜の、「ブラー」

セリフ

大喜びのみんなは今度は海へ探検に出かけました。

ウータ

「うわぉ、いろんな生き物がやってきたぞぉ。
ブーラーァッ。きみはだあれ?」

マングローブガニ

「ブラー。オレはここじゃちょいと有名なマングローブガニさ」

タック

「ねえ、海の上に森があるんだね。あんな形の森、はじめて見るよ。」

セリフ

タックは海に根をはる森の姿に驚きました。

すると、森から大きな声がひびいたのです。

マングー

「ブラー、わたしはマングローブのマングーだ。
よくきてくれたね。」

リノ

「わわわっ、マングローブは私のふるさとのフィリピンにもあるよ!」

セリフ

ウミガメノのリノは大はしゃぎです。

セリフ

ダクワカがボートをこぐ手をとめました。

ダクワカ

「さあ着いた。これから海の中を案内するね。」

セリフ

まずはダクワカ、次にタック、
その次にリノ、最後にウータが海の中にドボ、ドボン、ドッボン、
ドッボーオンと飛び込みました。

タック

「うわあっ〜きれいー!」

ウータ

「ホォーッ。こりゃあすごい…」

セリフ

動物たちはみんな驚き声をあげました。
みなさん、海の底に広がる色とりどりのもの、
これがなんだかわかりますか?

セリフ

そう、サンゴ礁です。

ダクワカ

「みんなにこのサンゴ礁のパラダイスを見せたかったんだ。
ねえ、こっちにきてくれるかい。」

セリフ

ダクワカはみんなをいったいどこに連れていくのでしょう。

ダクワカ

「みんなにね、ぼくの幼なじみを紹介したいんだ。モネ、でておいでよ。」

セリフ

すると、大きなイソギンチャクのあいだから、とってもきれいな色をしたお魚が現れたのです。

モネ

「ブラー、わたしカクレクマノミのモネ。どうぞよろしく。」

セリフ

バレリーナのようにおじぎをしたモネに
みんなはあいさつをしました。

みんな

「ブラー、モネ」

タック

「フィジーの海もサンゴ礁もとってもきれいだね」

セリフ

ところが……タックの言葉を聞いたモネは、
急に悲しそうな顔になったのです。

モネ

「本当はそうでもないの。
みんなにね、見て欲しいものがあるの。
こっちへきて」

セリフ

モネはそう言うと、みんなをある場所へと連れていきました。

そしてそこには驚くような光景が広がっていたのです。

タック

「あれえっ。なんて暗いの」

リノ

「水がすごく濁ってる。見えないよお」

セリフ

暗く濁った海の中をしっかり見ようと、
タックとリノとウータは目をこらしました。
目がなれてくると、海の底に白っぽい骨のような固まりが
一面に広がっているのが見えました。

モネ

「これはね……さっきと同じサンゴさんたちよ」

セリフ

モネは涙を浮かべています。

タック

「ええっ、これがサンゴ? 信じられない。
どうしてこんなに白くて汚れているの?」

セリフ

タックの問いに答えたのは、今にも泣きそうなダクワカでした。

ダクワカ

「サンゴたちは、死んだから白くなってしまったんだ。」

タック

「なぜサンゴは死んでしまったの? ダクワカ」

ダクワカ

「うん。理由のひとつはね、
海辺のマングローブが切られたせいで、
山の土砂が海に流れ込んで太陽の光をさえぎったので、
サンゴたちが死んでしまったんだ。」

リノ

「どうしてマングローブたちは切られてしまったんだい?」

セリフ

今度はリノが尋ねました。

ダクワカ

「それはね、世界中からたくさんの人たちがフィジーの海に
遊びに来るようになったのでホテルを建てたり道やビーチを
つくったりするために、マングローブが切られてしまったんだ。」

モネ

「マングローブはね、山から流されてくる土砂をその根っこで
受け止めて、海に入り込まないようにしてくれるのよ。
そしてその根っこはたくさんの生き物たちが住んでいるの」

セリフ

モネは、死んだサンゴ礁が横たわる海の底から、
今度はみんなを海辺のほうへと案内していきました。
海辺ではマングローブが海底にまでしっかりと根をはっています。

そうなのです。
マングローブの森は海の生き物たちになくてはならいものなのです。

タック

「ところで、どうしてたくさんの土砂が陸から海に
流れてくるんだろう?」

セリフ

タックの疑問の答えを捜しに、
みんなは海辺から陸にあがってきました。、
川をさかのぼっていくと、ついに小高い山の上にやってきました。

セリフ

山に生えていたのはマツの木です。
おや、雨が降り始めたら、
生物学者のウータ博士がどうして土が海に流れてしまうか、
気がついたようです。みなさんは、わかったかな?

ウータ

「みんな、わかったよぉ。
土の中と松の根の様子を考えてごらん。
雨水が木の根を伝って土の中にしみ込んでいるんだ。
気がついたようです。みなさんは、わかったかな?

ウータ

「では、もしここに松の木がなかったらどうなるだろう?
雨水は土の中にしみ込まないで土の上を流れてしまう。
そうすると山の土砂も海辺まで一緒に流してしまうんだ。」

セリフ

ウータ博士のここまでの説明、わかりましたか?
山に木がないと土砂が流れてしまって、そして海辺のマングローブがないと、土砂が海の中にそのまま流れ込んでしまい、サンゴや海の生き物たちが死んでしまうのです。
では、どうしたらサンゴたちを守れるのでしょう。
動物たちはみんな暗い顔になってしまいました。

ダクワカ

「実はね、みんなの力を貸してほしいことがあるんだ」

セリフ

ダクワカが力強い目でみんなに呼びかけました。

タック

「わぁ、木を植えてる~。マングローブの植林だぁ」

セリフ

そうなのです。この日は、フィジーの動物たちが山に、
そして海に木を植えていたのです。

タック

「ぼくも苗を植えるよ。」

セリフ

穴を堀りはじめたタック。その隣でリノが苗をささえました。

リノ

「オイラも手伝うよ。」

セリフ

タックもリノもウータも泥につかりながら、
たくさんのマングローブの苗を植えました。
ダクワカは大喜びです。

ダクワカ

「ありがとう!
みんなが植えた苗たちは将来マングローブの森になって
ぼくらの海を守ってくれるよ。」

ウータ

「この海辺に大きなマングローブの森ができるころにはね、
あの山に植えている松の苗も大きくなって
りっぱな森になっているよ」

セリフ

そうです。みんなが山に植えている松の苗、 海辺に植えているマングローブの苗、この苗たちが大きく育った時、 山では松の木の根が雨水を貯めて洪水を防ぎ、海辺ではマングローブの根が土を食い止め、 海の生き物を守るのです。

モネが背ビレを大きくゆらしました。

モネ

「そうしたら、サンゴ礁がたくさん育ってわたしたちのすみかが戻ってくるのね。」

ダクワカ

「一日も早くそんな日がきてほしいなあ。みんな、苗を植えてくれてありがとう!Vinaka(ヴィナカー)」

セリフ

ダクワカがフィジー語で「ありがとう!」とお礼をいうと、モネも大きな声で続けました。

モネ

「Vinaka(ヴィナカー)」

セリフ

ダクワカとモネが喜んでくれて、タックもウータもリノもうれしくなりました。すると、マングーの大きな声が響き渡ったのです。

マングー

「Vi—、na—、ka—。(ヴィナカー)
みんなでマングローブの苗を植えてくれてありがとう!
ぼくの兄妹たちがたくさん増えればマングローブたちが力をあわせてフィジーの海を守れるんだ。
昔のような美しいサンゴ礁の広がる海が戻ってくるよ」

ダクワカ

「頼りにしてるよ、マングー。」

セリフ

みんなはマングーの太くて力強い手をしっかりと握りしめました。
将来、大きく育ったマングローブたちがフィジーの海を守っていくことでしょう。
美しく元気なサンゴ礁が育ち、そこでは海の生き物たちが平和に暮らしていけるのです。

タック

「あれっ そろそろ出発の時間だよ。」

セリフ

タックの声にみんなはわれにかえりました。

リノ

「オイラたち、次の国へいかなくちゃ。」

セリフ

リノの声は少し寂しそうです。

ウータ

「ぼく、マングローブが大きくなるころ、
またフィジーにくるよ。モネ、約束するよ。」

セリフ

ウータがモネに約束しました。

ダクワカ

「さあ、みんな、この船に乗ってくれ。」

ダクワカ

「みんな、用意はいいかい?さあ、出発だ!」

セリフ

ダクワカにうながされ、
みんなはタキアという帆船に乗りこみました。

みんな

「MOSE(モゼー)、さようなら、フィジー。」

セリフ

みなさんもいっしょに」
「Mose(モゼー)、さようなら フィジー」

セリフ

おしまい。

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