公益財団法人 オイスカ OISCA

世界の国の森のおはなし~世界「子供の森」探検ツアー~は、「国際理解」や「環境」について考えるきっかけを楽しく簡単につくれる「かみしばい」です

公益財団法人オイスカ

この教材は、平成25年度子どもゆめ基金(独立行政法人国立青少年教育振興機構)助成金の交付を受けて作成したものです。

上映を

字幕を

「タイの森のおはなし」

作:公益財団法人オイスカ

ブアカオ

「サワッディー クラップ! 僕の故郷、タイの森へようこそ!」

セリフ

ニシキヘビのブアカオが、元気良く挨拶しました。

タック

「えっと……、『サワッディー クラップ』は、
『こんにちは』って意味だね」

セリフ

日本から来たタヌキのタックが、
タイのガイドブックを見ながら言いました。

ゾウママ

「あらタック、女性は『サワッディー カー』って言うみたいよ〜」

セリフ

そう答えるのは、ケニアから来たゾウのゾウママです。
同じ『こんにちは』でも、女性と男性でちょっと言い方が違うんですね。

ワニール

「お~いっ、そろそろ行こ〜よぉ!」

セリフ

ブラジルから来たワニのワニールと、
インドネシアから来たヘラクレスオオカブトムシのシボランが、
うずうずしながら言いました。
動物たちは、これからピクニックに出かけるようです。

セリフ

みんなで森の小道を楽しく歩いているときでした。

シボラン

「あれ? 誰か、たき火をしてるのかな?」

セリフ

シボランが、もくもく立ちのぼる煙に気付きました。

タック

「そうだ! みんなで焼きイモつくろうよ〜」

セリフ

と、ホクホクに焼けたおイモを想像しながら、タックが言いました。

セリフ

でも、
ブアカオはとっても慌てた様子です。

ブアカオ

「タック、シボラン、違うよ!! あれはっ……」

ブアカオ

「山火事だ〜!!」

セリフ

メラメラメラメラ!
ゴウゴウゴウゴウ!

と、燃え上がる炎を見て、動物たちは大パニックです。

みんな

「わ〜っ! 大変だあ〜〜!!」
「だれか、来て〜〜!!」

ワニール

「はっ、はやく火を消さないとっ! 水! 水はどこだ〜!」

セリフ

ワニールが、赤い顔をさらに真っ赤にして、水を探しています。
炎は、どんどん広がっていきます。

(間)

そのときでした。

ゾウママ

「みんな〜、大丈夫よ〜」

セリフ

のんびりと大きな体を揺らしながら、ゾウママがやって来ました。

ワニール

「大丈夫なわけないだろッ、ゾウママ! 森が燃えちまうよ〜!」

セリフ

ワニールが大声で叫びました。

でもゾウママはやっぱりのんびりした様子で、

ゾウママ

「私にまかせなさぁ〜い」

セリフ

と言うと、ながーい鼻を空に向かって伸ばしました。

ゾウママ

「せ〜〜のっ!」

セリフ

ぴゅっ〜〜〜!!

ゾウママの鼻から、一気に水が噴き出します。
近くにあった川から、目一杯の水を体に蓄えてきたのでした。

火の勢いは、みるみる弱まっていきます。

みんな

「ゾウママ、すごい!!」

セリフ

パチパチパチと動物たちは拍手喝采です。

セリフ

火が消えて一安心。
動物たちは、森を見渡せる丘の上で休憩することにしました。

ところが・・・。

タック

「あれ? 何だか森が変だよ」

セリフ

タックが不思議そうに言いました。

タック

「どうしてこんなに木が少ないの? これじゃあ、はげ山だよ!」

セリフ

するとブアカオが、悲しそうな顔をしてつぶやきました。

ブアカオ

「これはね・・・・、『焼畑農業』というやり方のせいなんだ」

みんな

「焼畑農業!?」

セリフ

みんなびっくりして、ブアカオのほうを見ました。

ブアカオ

「焼畑農業は、森の一部を燃やして、畑に変える農業のことなんだ。
何年か作物をとると、土地が痩せてしまうから、また別の場所を燃やして畑にするんだよ」

セリフ

それを聞いたワニールが、思わずブアカオの話をさえぎります。

ワニール

「オイオイ! そんなことしたら、森がなくなっちまうぞッ!」

ブアカオ

「うん、ワニール。昔はね、燃やしたところが元に戻るのを待って、少しずつ焼畑をしていたんだ。
でも今はそうじゃない。人間は、森の回復よりも畑を増やす方が大事なんだ。それに、焼畑の火が他に燃え移って、さっきみたいに山火事になることもあるんだよ」

みんな

「ひどい!」

セリフ

動物たちが口をそろえて言いました。

セリフ

ブアカオは、暗い顔で話を続けます。

ブアカオ

「木が減ってしまうと、森は、雨が降っても水を貯められなくなるんだ。
そうすると、とっても恐ろしい災害、土砂崩れや洪水が起きることがあるんだよ。このままだと、僕のふるさとの森がなくなってしまうよ・・・・」

セリフ

動物たちは、ブアカオの話を聞いて、どうしたら良いのか考えます。

ワニール

「森を守るためには、焼畑農業を止めさせるしかないぞっ!」

セリフ

ワニールが怒りに任せて言いました。

タック

「僕は、国や政治家に『森を守って』とお願いするのが良いと思うな。だって、森はみんなのものでしょ?」

セリフ

今度はタックが自分の考えを主張しました。

セリフ

最後にシボランが、難しい顔で言いました。

シボラン

「でも人間は、いつまでたっても森の大切さに気付かないかもしれないよ。
ブアカオ、この森はあきらめて、早く他に引っ越した方がいいんじゃない?」

セリフ

さあ・・・・、みんなは動物たちの考えをどう思ったかな?
そして、みんなだったら、どうすれば良いと思うかな?

(間)

一生懸命に考えていると、

ゾウママ

「ホラッ、お腹空いたでしょ〜」

セリフ

と、ゾウママがいろんな食べ物を持ってきました。

シボラン

「えっ!? どーしたの、それ?!」

セリフ

シボランが目をパチパチさせながら尋ねます。

ゾウママ

「も〜ちろん、この森で収穫したの。ちょっと量は少ないけど、でも、森はまだ生きているわよぉ」

みんな

「ありがとう、ゾウママ!」

セリフ

動物たちは、森でとれた果物や木の実、キノコをおいしそうに食べました。

(間)

ブアカオ

「やっぱり僕は、この森をもっと元気にしたいよ!」

セリフ

ブアカオはそう言うと・・・・・、

セリフ

せっせと土を掘り、そこに、一本の木を植え始めました。

ブアカオ

「よいしょ、よいしょ、よいしょ・・・・・。
心を込めて植えれば、きっと大きく育つはずだよ!」

セリフ

そんなブアカオの姿を見て、動物たちは決めました。

「みんなで木を植えよう!」

みんな

「植えよう!」「植えよう!」
「木を植えよう!」

セリフ

他の動物も呼んで、何だかとってもにぎやかです。大変な作業だけど、楽しそうですね!

ブアカオ

「コップンクラップ!」

セリフ

ブアカオが、木を植えてくれた動物たちにお礼を言いました。「コップンクラップ」は、タイ語で「ありがとう」という意味です。

(間)

セリフ

たくさんの仲間と一緒にがんばれば、
そして、森を愛する心を失わなければ、
きっと豊かな森がよみがえるはずです。
人間と動物が、一緒に仲良く暮らせる森になりますように!

(間)

おしまい。

マウス・ホイールを使って、ゆっくりスクロールさせてください。